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北欧伝承のトリックスターを独自に解釈した人物画。独自制作イメージ。

北ヨーロッパ · 神話上の人物

ロキ

Loki

Codex ImageGen による独自制作イメージ

ロキはどんな人物?

ロキは、北欧神話で神々と行動する、知恵と変身に長けた人物です。危機を切り抜ける助け手になる一方、自分で騒動を起こし、その後始末まで引き受けます。やがて神々との関係は決定的に壊れますが、単純な味方や悪役では説明できません。物語ごとに立場が変わるところが、ロキを知る面白さです。

  • 神々と旅する、巨人の子オーディンやトールと行動しますが、父は巨人です。神々の内側と外側を行き来します。
  • 失敗からトールの槌が生まれたシヴの髪を切った償いで小人たちを競わせ、ミョルニルなど六つの宝を作らせました。
  • 変身と知恵で、危機も騒動も生む魚や馬などに姿を変え、神々を助けることもあれば、取り返せない事件を起こすこともあります。

基本情報

分類
北欧神話 / 神話上の人物
別名
ロプト(Loptr)、ロキ神
地域
北ヨーロッパ
目次

代表的な物語

出来事の背景から、その後の変化までをたどります。

失敗から神々の宝が生まれた

眠るシヴの髪を切り、その髪を手に持つロキを描いた絵
代表的な逸話この逸話をもとにした独自制作イメージです。古代の図像資料ではありません。

ロキの特徴が最も分かりやすいのが、仲間の大切なものを奪い、その償いから神々の宝が生まれる話です。ロキは、雷神トールの妻シヴの髪を切ってしまいます。怒ったトールに捕らえられると、髪を元に戻すだけでなく、神々への贈り物も用意すると約束しました。[1]

ロキは二組の小人の職人を競わせます。その結果、シヴの新しい金の髪に加え、のちの物語を支える武器や道具が作られました。問題を起こした責任は消えませんが、解決の過程で神々が以前より強力な宝を得るところに、ロキの行動の両面性が表れています。[1]

  1. 1
    発端

    ロキがシヴの髪を切り、怒ったトールに捕らえられる。[1]

  2. 2
    償いの約束

    頭に根づく金の髪を小人たちに作らせると誓う。[1]

  3. 3
    宝作りの競争

    二組の小人を競わせ、髪を含む六つの宝を作らせる。[1]

  4. 4
    結果

    神々はトールの槌ミョルニルを最良の宝と認める。[1]

城壁の約束を破るため、牝馬に変身した

別の逸話では、神々の城壁を築く職人が、期限内に完成した報酬として女神フレイヤと太陽と月を求めます。職人の牡馬スヴァジルファリが工事を助けたため、約束どおりに完成しそうになります。契約を勧めたロキは、神々から工事を遅らせるよう迫られました。[1]

ロキは牝馬に姿を変え、牡馬を森へ誘って工事を遅らせます。職人は期限を守れず、ロキはのちに八本脚の馬スレイプニルを産みました。スレイプニルは主神オーディンの乗馬になります。危機を脱する機転と、その結果を自分の身体で引き受ける展開が一続きになった逸話です。[1]

バルドルの死で、いたずらは取り返せない事件になる

ここまでの騒動には、最後に宝や解決が残りました。ところが、主神オーディンの子バルドルの死では、失われた命が戻らず、ロキと神々の関係も元に戻りません。この出来事が、助け手でもあったロキを神々の敵へ変える転機になります。[1]

傷つかないはずのバルドルに、唯一の例外があった

北欧神話をまとめた中世の散文資料『エッダ』では、バルドルが死を予感する夢を見ます。母フリッグは火、水、金属、石、木、病、動物など、あらゆるものから息子を傷つけない誓いを取りました。神々は何を投げても傷つかないバルドルを囲み、その安全を遊びとして確かめます。[1]

ロキは女の姿でフリッグから、まだ若すぎるため誓いを求めなかったヤドリギ(木に寄生して育つ植物)の存在を聞き出します。そしてヤドリギを手に入れ、輪の外にいた目の見えない神ホズに持たせ、狙う方向を教えました。放たれたヤドリギはバルドルを貫き、神々が防いだはずの死が、ただ一つの例外から現実になります。[1]

死者の国から戻る最後の機会も失われる

バルドルを死者の国から戻すため、ヘルは世界のすべてが彼のために泣くことを条件にします。ほとんどのものが泣くなか、女巨人セックだけが涙を拒み、バルドルは戻れませんでした。スノッリは、このセックもロキだったと人々が考えている、と記します。[1]

逃亡、捕縛、そして世界の終わりの戦い

鮭に化けて逃げ、自分で考えた網に捕まる

神々の怒りから逃れたロキは、四方を見渡せる家に隠れ、昼は鮭に姿を変えて滝へ潜みました。追手がどんな道具を使うか考えるため、糸を編んで網の形を試していたところへ神々が来ます。ロキは網を火へ投げますが、残った灰の跡から仕組みを見破られ、その網を再現されて捕まりました。[1]

ロキは岩に縛られ、頭上に置かれた蛇の毒を受け続けます。妻シギュンが器で毒を受けますが、器を空にする間だけ毒が顔に落ち、ロキが身をよじるため地震が起こると説明されます。どの息子が狼に変えられ、誰の腸が縄になるかは、詩『ロキの口論』の末尾にある説明と、中世の散文『エッダ』で異なります。[1][2][3]

最後は神々の敵として戦う

ロキの拘束は、神々の世界が滅びる最終戦争「ラグナロク」まで続きます。中世の散文『エッダ』では、解き放たれたロキは死者の軍勢とともに戦場へ現れ、神々の見張り役ヘイムダルと戦って相討ちになります。かつて神々と食卓や旅を共にした人物は、最後には反対側に立って物語を終えます。[1]

さらに詳しく知る

出自や人物関係、資料による違いを確認します。

ロキの出自・家族・神々との関係

スノッリの『エッダ』は、ロキを神々の一員に数えながら、巨人ファールバウティとラウフェイ(別名ナール)の子と説明します。神々の集団に加わって行動しますが、出自まで同じではありません。この立場の違いが、仲間と部外者の両方に見える背景になります。[1]

子どもたちは神々の終末に関わる

ロキの妻はシギュンで、二人のあいだにはナリまたはナルヴィと呼ばれる息子がいます。さらに巨人の女性アングルボザとのあいだに、狼フェンリル、世界を取り巻く蛇ヨルムンガンド、死者の領域を治めるヘルが生まれました。城壁建設の逸話でロキが産んだスレイプニルも、のちにオーディンの乗馬になります。[1]

神々はフェンリル、ヨルムンガンド、ヘルが災いをもたらすという予言を知り、三者を引き離します。しかし、その処置はラグナロクの対決を準備することにもなりました。フェンリルはオーディンをのみ込み、ヨルムンガンドはトールと相討ちになり、ヘルのもとからも軍勢が来ると語られます。[1]

オーディンやトールとは、事件ごとに関係が変わる

『ロキの口論』第9節で、ロキはオーディンに、かつて互いの血を混ぜ、二人そろわなければ酒を受けないと誓ったはずだと迫ります。これは実の兄弟関係ではなく、ロキ自身が持ち出す盟約です。盟約を結んだ場面そのものは、現存する物語には残っていません。[2]

トールとは旅の同行者として現れる一方、シヴの髪の事件では償いを迫られます。ロキと神々の関係は、親しい仲間や永遠の宿敵という一語では表せず、出来事ごとに協力と対立が入れ替わります。[1]

物語に登場する相手とのつながりを、役割ごとに整理しました。名前を選ぶと関係する逸話へ移動できます。

ロキ神話上の人物

神々との関係

オーディン

『ロキの口論』で、ロキが血を混ぜた盟約を持ち出す相手。スレイプニルの乗り手でもある。[2][1]

トール

旅の同行者であり、シヴの髪を切ったロキに償いを迫る人物。[1]

ヘイムダル

ラグナロクでロキと戦い、相討ちになる神々の見張り役。[1]

家族

シギュン

ロキの妻。拘束されたロキの頭上で、蛇の毒を器に受け続ける。[1][2]

アングルボザ

スノッリ版で、フェンリル、ヨルムンガンド、ヘルの母とされる巨人の女性。[1]

スレイプニル

ロキが牝馬の姿で産み、オーディンの乗馬となる八本脚の馬。[1]

資料によって変わるロキ像

ここまでの出来事は、因果が分かりやすい順に並べています。北欧神話に、ロキの生涯を一つの年代順で記した資料があるわけではありません。異なる時期に記録された詩や散文を、矛盾のない一つの伝記として結びつけないことが大切です。[3]

バルドルの死は、資料ごとに細部が異なる

異なる資料の説明を比べる

『ロキの口論』第28節では、ロキ自身がバルドルを帰れなくした責任を認めます。一方、『巫女の予言』はホズとヤドリギを語りますが、死の仕掛け人としてロキの名を出しません。ホズが盲目か、ロキがヤドリギを渡したかも、資料によって一致しません。[2][3]

この記事で詳しく紹介したのは、スノッリ版の筋です。「北欧神話では必ずこの一通りだった」とは断定せず、異なる詩や物語が残ることを前提に読む必要があります。[3]

「悪神」だけでは説明できない

この読み方の根拠を詳しく見る

ロキを悪役とだけ見れば、バルドルの死とラグナロクは説明しやすくなります。しかし、それでは神々の宝を獲得し、危機に同行し、オーディンとの盟約を持ち出す協力者としての姿がこぼれ落ちます。反対に、愉快ないたずら者とだけ見れば、回復できない死を成立させる役割を軽く扱うことになります。[1][2]

研究者のジェームズ・パークハウスは、ロキを本質的な敵対者とみなす読みが、13世紀のスノッリによる描写の影響を強く受けていると指摘します。スノッリの著作は重要な資料ですが、キリスト教化以前の信仰をそのまま写した記録ではありません。どの資料がどの姿を語るかを分けることが、ロキを理解する助けになります。[4]

創作の観点では、問題と解決を同時に生む行動や、取り返せる騒動から取り返せない破局へ越える境目に注目すると、ロキらしい構造が見えてきます。これは原典の事実ではなく、ここまでの逸話をもとにした編集部の読みです。

ロキが登場する作品

作品ごとの登場人物や設定を紹介します。

出典・参考資料

本文の注番号から、根拠にした資料を確認できます。

  1. 1
    Edda(Anthony Faulkes英訳) ↗ Snorri Sturluson / Viking Society for Northern Research · 一次資料(中世史料の英訳)

    13世紀にスノッリがまとめた『エッダ』。『ギュルヴィたぶらかし』26・33〜35・42・49〜51節と『詩語法』のロキの呼称、シヴの髪と宝物の逸話を確認。

  2. 2
    Lokasenna(ロキの口論) ↗ 『詩のエッダ』Henry Adams Bellows英訳 / Internet Sacred Text Archive · 一次資料(エッダ詩の英訳)

    第9節のオーディンとの盟約、第28節のバルドルの死への言及、末尾散文のロキ捕縛を確認。訳者注と本文は区別して参照。

  3. 3
    Primary Sources regarding Loki and the Death of Baldr ↗ University of Victoria, Humanities Computing and Media Centre · 専門機関による史料比較

    『エッダ』諸資料とサクソの記述を論点別に比較した表。バルドルの死でロキ、ホズ、ヤドリギが明記されるか、ロキの捕縛がどう語られるかの差を確認。

  4. 4
    Loki the Slandered God? Selective Omission of Skaldic Citations in Snorri Sturluson’s Edda ↗ James Parkhouse / Cambridge Core · 研究論文(書籍所収章)

    2021年。ロキ像の多面性と、スノッリの『エッダ』をキリスト教化以前の伝承の単純な写しとして扱えない点を論じる。公開されている概要を確認。

  5. 5
    ロキ — キャラクター検索 ↗ ONE PIECE.com

    ONE PIECE公式キャラクター紹介。ロキがウォーランド王国の王子で、「呪いの王子」と呼ばれる人物であることを確認。

  6. 6
    Loki — Characters ↗ Marvel

    Marvel公式プロフィール。コミック・映像作品に登場するロキの人物紹介を確認。

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